高いテキーラって、ブランド代だと思っていませんか?
もちろんブランド力もあります。でも本当の差は、「どこを削って、どこを残すか」という製造上の判断にあるんです。
たとえばドン・フリオ 1942、そしてクラセ・アスール。どちらも日本で有名な高価格帯のテキーラです。でも、原料のブルーアガベは他のテキーラと同じく6〜8年かけて育てたもの。では何が違うのか。3つのポイントで解説します。
① 蒸溜時の「カット」——多く捨てるほど上質になる
蒸溜の工程では、最初に出てくる液体を「ヘッド」、最後に出てくる液体を「テイル」と呼びます。ヘッドには刺激の強い成分、テイルには雑味が多く含まれるため、この両端を切り落として真ん中の「ハート」だけを取り出します。
ここがポイント。ヘッドとテイルを多めに切り落とすほど、味はクリアで上品になります。しかし取れる量は減る。同じアガベを使っても仕上がりの液体が少なくなるわけです。
つまり高級テキーラは、味のために歩留まりを犠牲にしている。量産テキーラがカットを控えめにして量を確保するのとは真逆のアプローチです。
② 熟成期間と「天使の分け前」
熟成期間が長いほど、出荷までに時間がかかり、その間の在庫コストが積み上がります。アネホなら1〜3年、エクストラ・アネホなら3年以上。その間、蒸溜所は原酒を樽に寝かせたまま出荷できません。
さらに、熟成中は少しずつアルコールや水分が蒸発します。これを「天使の分け前(エンジェルシェア)」と呼び、年間2〜5%程度が自然に失われます。メキシコの温暖な気候ではこの蒸発も速く、時間をかけるほど中身は減り、コストは上がるのです。
③ ブランド設計——ボトルから体験まで
製造コストだけでなく、ブランドの設計も価格に反映されます。
クラセ・アスールは、職人が手描きで仕上げる陶器ボトルが象徴的。ボトルだけで相当なコストがかかっており、飲み終わった後もインテリアとして残る「体験」込みの価格設計です。
ドン・フリオ 1942は、高級ラインとして世界基準の価格帯を維持。高品質な原酒と洗練されたパッケージで、プレミアムテキーラの代名詞というポジションを確立しています。
まとめ:高い理由は「3つの投資」
高いテキーラが高いのは、ブランド名だけが理由ではありません。
- 蒸溜で多くを捨てる——歩留まりを犠牲にして味を磨く
- 熟成で量が減り、時間がかかる——天使の分け前と在庫コスト
- ブランドで価値を設計する——ボトル、体験、世界観
この3つの投資が重なった結果が、あの価格。逆に言えば、「高い理由」がわかると、そのテキーラが何にこだわっているのかが見えてきます。
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