メキシコのお酒に、虫が入ったものがあるのを知っていますか?
ボトルの底に沈んだイモムシ。見たことがある方もいるのではないでしょうか。「あれ何?」「飲んでも大丈夫なの?」——今回はあの虫の正体と、虫入りのお酒にまつわる話を解説します。
虫の正体は「グサーノ」
ボトルに入っている虫の正体は、グサーノ(gusano)と呼ばれるアガベの中に住むイモムシです。アガベに寄生する蛾の幼虫で、赤いもの(グサーノ・ロホ)と白いものがあり、ボトルに入るのは主に赤いグサーノ。メキシコでは食用としてタコスの具材にもなります。
なぜボトルに虫を入れるのか
グサーノがボトルに入っている理由には諸説あります。
品質の証明説
昔、水で薄めた粗悪なお酒が出回っていた時代、生きた虫をボトルに入れて即死させることで「ちゃんとアルコールが入っている」と証明していたという説。虫が腐らずに保存されていること自体が、十分なアルコール度数の証拠になったわけです。
マーケティング説
もうひとつは1930年代のマーケティング説。メキシコのお酒をアメリカに売り出す際、他のスピリッツと一目で区別できるインパクトを狙って虫を入れ始めたとされています。
どちらが正しいかは定かではありませんが、「虫入りのメキシコの酒」は世界中で話題になり、強烈なブランドイメージを作りました。
味への影響は?
気になるのは味。グサーノ入りのお酒は、虫なしのものと比べてコクと深みが増すという声もあります。虫の成分がお酒に溶け出し、微妙な風味の変化を生むのかもしれません。
ただし、虫そのものを食べると苦みが強いそうです。ボトルの最後に残った虫を食べるのは一種の儀式のようなもので、味を楽しむというよりは体験としての意味合いが強いようです。
この虫入りのお酒の正体は「メスカル」
そして重要なポイント。この虫が入ったお酒はテキーラではなく、メスカルです。
Part10で紹介したとおり、メスカルはテキーラと同じアガベ原料のメキシコの蒸溜酒で、テキーラの元祖とも言われています。地中の石窯でアガベを蒸し焼きにするため、スモーキーな風味が特徴です。
テキーラには厳格な製法規定があり、虫を入れることは認められていません。グサーノ入りのボトルを見かけたら、それはメスカルです。
ちなみにメスカルでも、現在の高品質なクラフトメスカルは虫なしが主流。グサーノ入りは伝統的・観光的な一部の製品に限られています。
まとめ
ボトルに沈んだ虫の正体は、アガベに住むイモムシ「グサーノ」。品質証明やマーケティングの目的で入れられたとされ、そのお酒はテキーラではなくメスカルです。
テキーラとメスカル、似ているようで違う2つのアガベスピリッツ。その違いを知ると、メキシコのお酒の世界がもっと面白くなります。
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