稲妻の形をした、この奇妙なテキーラのボトル。一体誰が作ったと思いますか?
答えはイーロン・マスク。世界一の富豪が、ジョークから始めて本気で商品化したテキーラの話です。
始まりはエイプリルフールのジョーク
2018年のエイプリルフール。マスクはTwitter(当時)に「テスラが倒産した」というジョーク投稿を公開しました。
その投稿に添えられた写真には、気絶したマスクの周りに転がる「テスラキーラ(Teslaquila)」のボトル。あくまでネタとして登場した架空のテキーラでした。
ところが、このジョークが独り歩きしていきます。マスクは本気で商品化に動き出し、「Teslaquila」で商標登録まで申請したのです。
メキシコのテキーラ業界が猛反発
ここで大きな壁にぶつかります。メキシコのテキーラ業界が、この名前に猛反発しました。
理由は、テキーラという名前が原産地呼称で法的に守られているから。メキシコの特定5州で、決められた原料と製法で造られたものしか「テキーラ」を名乗れません。「テスラキーラ」という名前は、この保護された呼称を侵害する可能性があるとして問題視されました。
世界一の富豪であっても、テキーラの伝統の前では特別扱いされない。それだけテキーラという名前は厳格に守られているのです。
名前を変えて発売——数時間で完売
結局マスクは名前を「Tesla Tequila(テスラ・テキーラ)」に変更。中身はメキシコの正規蒸溜所で製造された、れっきとした100%アガベのアネホテキーラです。
ボトルは稲妻型の手吹きガラス。テスラのブランドカラーを反映したデザインで、価格は250ドル。テキーラとしては決して安くありません。
そして2020年11月に発売されると、数時間で完売。発売直後には空のボトルがネットで数百ドルで転売されるほどの人気になりました。中身のテキーラではなく、イーロン・マスクが作ったという話題性と稲妻型ボトルのコレクション性が価格を押し上げたのです。
テキーラの原産地呼称の強さ
このエピソードが示しているのは、テキーラの原産地呼称がいかに強力かということ。
シャンパンがシャンパーニュ地方のスパークリングワインだけが名乗れるように、テキーラもメキシコの指定5州で造られたものだけが名乗れる。この制度はマスクのような世界的な影響力を持つ人物でも覆せませんでした。
テキーラという名前の裏には、メキシコの法律、テキーラ規制委員会(CRT)の監視、そして何百年もの歴史と文化がある。その重みが、テキーラのブランド価値を世界的に守っているのです。
まとめ
イーロン・マスクのテスラ・テキーラは、ジョークから生まれ、原産地呼称の壁にぶつかり、名前を変えて発売し、数時間で完売した。
世界一の富豪のジョークですら、テキーラの伝統の前では特別扱いされない。それが、テキーラという名前の重さです。
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