メキシコ料理といえば何を思い浮かべますか?
タコス、ナチョス、ブリトー、チリコンカン、ファヒータ。これらが浮かんだ方も多いと思います。でも実は、これらはメキシコ料理ではありません。
「メキシコ料理」の正体
私たちがメキシコ料理だと思っているものの多くには、実はアメリカ生まれという意外なルーツがあります。
パリパリのハードシェルタコス。あの固い皮は、1940年代にアメリカで考案されたもの。Part54で紹介したとおり、本場メキシコのタコスはやわらかいコーントルティーヤを使い、サイズもずっと小さくシンプルです。
ナチョス。1943年、メキシコ国境付近のレストランで、米軍の妻たちのために即席で作られたのが始まり。その後アメリカで発展し、チーズソースをたっぷりかけるスタイルが定着しました。
ブリトー。大きな小麦粉トルティーヤで具材をぎっしり巻くスタイルは、メキシコ北部に原型はあるものの、現在の形に広まったのはアメリカです。
チリコンカン。名前はスペイン語ですが、テキサス州の入植者が考案した料理。メキシコには存在しない料理です。
ファヒータ。こちらも名前はスペイン語ですが、生まれはアメリカのテキサス。テキサスの牧場労働者が安い部位の肉をグリルして食べていたのが起源とされています。

なぜアメリカで「メキシコ風」料理が生まれたのか
これほど多くの「メキシコ風」料理がアメリカで生まれた背景には、歴史的な理由があります。
かつてテキサスはメキシコ領でした。しかし1836年にテキサス共和国として独立し、1845年にアメリカに編入。その後もテキサスに残ったメキシコ系住民(チカーノ)が、メキシコの食文化をアメリカ人の味覚に合わせてアレンジし続けた結果、メキシコでもアメリカでもない独自の料理文化が生まれたのです。
この料理ジャンルを「テクスメクス(TEX-MEX)」と呼びます。テキサス(Texas)とメキシコ(Mexico)を合わせた造語です。
本場のメキシコ料理はもっとシンプル
テクスメクスがチーズやサワークリームをたっぷり使った濃厚な味付けなのに対し、本場のメキシコ料理はもっとシンプルで素材の味を活かしたものが中心です。
小さなコーントルティーヤに肉と玉ねぎとパクチーだけのタコス。チリと石臼で挽いたサルサ。とうもろこしのスープ「ポソレ」。メキシコ料理はユネスコの無形文化遺産にも登録されており、その本質は「素材を活かすシンプルさ」にあります。
そしてそんな本場メキシコの食文化と同じ土地で生まれたのが、テキーラ。アガベだけで造り、余計なものを加えない。素材の力で勝負するという思想は、メキシコの食文化そのものと重なります。
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